有機溶剤業務従事者に対する労働衛生教育の解説
有機溶剤の作業をする方は「有機溶剤業務従事者に対する労働衛生教育」を受ける必要があります。
作業者は衛生教育を受けてから作業をすることが通達において強く求められています。
「有機溶剤業務の労働衛生教育」についての通達
通達 有機溶剤業務従事者に対する労働衛生教育の推進について(昭59.6.29 基発第337号)
有機溶剤中毒の予防対策の実効をあげるために、事業者が行う労働衛生管理に加えて、個々の労働者が有機溶剤の毒性及び中毒の予防対策の必要性を正しく理解し、事業者が行う諸対策に積極的に協力することが重要である。 しかし、最近の有機溶剤中毒の発症事例をみると、労働者に対する労働衛生教育が行われていないか、又は不十分であることが原因であるものが依然として相当数にのぼっている。 一方、労働衛生教育の推進について 、昭和59年2月16日付け基発第76号「安全衛生教育の推進について」及び昭和59年3月26日付け基発第148号「安全衛生教育の推進に当たって留意すべき事項について」によりその推進を図ることとしたところである。 これらの背景及び通達の趣旨を踏まえて、今般、「特別教育」に準じた教育として、別添のとおり有機溶剤業務従事者に対する労働衛生教育実施要領を定め、同教育を推進することとしたので、了知のうえ、その円滑な運用に努められたい。
有機溶剤業務従事者に対する労働衛生教育実施要領
1.目的
有機溶剤中毒の予防対策の一環として、有機溶剤業務に従事する者に対し、
(1) 有機溶剤による疾病及び健康管理
(2) 作業環境管理
(3) 保護具の使用方法
(4) 関係法令
についての知識を付与することを目的とする。
有機溶剤業務従事者に対する労働衛生教育カリキュラム
科目 | 範囲 | 時間 |
---|---|---|
有機溶剤による疾病及び健康管理 | 有機溶剤の種類及びその性状 有機溶剤の使用される業務 有機溶剤による健康障害、その予防方法及び応急措置 |
1時間 |
作業環境管理 | 有機溶剤蒸気の発散防止対策の種類及びその概要 有機溶剤蒸気の発散防止対策に係る設備及び換気のための設備の保守、点検の方法 作業環境の状態の把握 有機溶剤に係る事項の掲示、有機溶剤の区分の表示 有機溶剤の貯蔵及び空容器の処理 |
2時間 |
保護具の使用方法 | 保護具の種類、性能、使用方法及び保守管理 | 1時間 |
関係法令 | 労働安全衛生法、労働安全衛生法施行令、労働安全衛生規則及び有機溶剤中毒予防規則(これに基づく告示を含む。)中の関係条項 | 0.5時間 |
有機溶剤・有機溶剤等とは
「有機溶剤」とは、物質を溶かす性質をもつ有機化合物のことで多くの種類があります。
有機溶剤中毒予防規則では、労働安全衛生法施行令別表第6の2(下記参照)の有機溶剤をいい、 44種類の有機溶剤とそれらの物のみからなる混合物のことをいいます。 また有機溶剤等とは、有機溶剤と他の物質の混合物で、有機溶剤を5%を超えて含有するものをいいます。
有機溶剤の分類
有機溶剤は労働安全衛生法施行令別表第6の2(下記参照)に掲げてあり、有機溶剤の性質により第1種から第3種の3種に分類されています。
有機溶剤中毒予防規則(第1条第3.4.5号)
第1種有機溶剤等 | 単一物質である有機溶剤のうち有害性の程度が高くしかも蒸気圧が高いもの |
第2種有機溶剤等 | 第1種以外の単一物質である有機溶剤 |
第3種有機溶剤等 | 多くの炭化水素が混合状態となっている石油系および植物系溶剤であって沸点がおおむね200°C以下のもの |
有機溶剤は労働安全衛生法施行令別表第6の2
有機溶剤
一 アセトン
二 イソブチルアルコール
三 イソプロピルアルコール
四 イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)
五 エチルエーテル
六 エチレングリコールモノエチルエーテル(別名セロソルブ)
七 エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(別名セロソルブアセテート)
八 エチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテル(別名ブチルセロソルブ)
九 エチレングリコールモノメチルエーテル(別名メチルセロソルブ)
十 オルト‐ジクロル ンゼン
十一 キシレン
十二 クレゾール
十三 クロル ンゼン
十四 削除
十五 酢酸イソブチル
十六 酢酸イソプロピル
十七 酢酸イソペンチル(別名酢酸イソアミル)
十八 酢酸エチル
十九 酢酸ノルマル-ブチル
二十 酢酸ノルマル-プロピル
二十一 酢酸ノルマル-ペンチル(別名酢酸ノルマル-アミル)
二十二 酢酸メチル
二十三 削除
二十四 シクロヘキサノール
二十五 シクロヘキサノン
二十六 削除
二十七 削除
二十八 一・二‐ジクロルエチレン(別名二塩化アセチレン)
二十九 削除
三十 N・N‐ジメチルホルムアミド
三十一 削除
三十二 削除
三十三 削除
三十四 テトラヒドロフラン
三十五 一・一・一‐トリクロルエタン
三十六 削除
三十七 トルエン
三十八 二硫化炭素
三十九 ノルマルヘキサン
四十 一‐ブタノール
四十一 二‐ブタノール
四十二 メタノール
四十三 削除
四十四 メチルエチルケトン
四十五 メチルシクロヘキサノール
四十六 メチルシクロヘキサノン
四十七 メチル-ノルマル-ブチルケトン
四十八 ガソリン
四十九 コールタールナフサ(ソル ントナフサを含む。)
五十 石油エーテル
五十一 石油ナフサ
五十二 石油 ンジン
五十三 テレビン油
五十四 ミネラルスピリツト(ミネラルシンナー、ペトロリウムスピリツト、ホワイトスピリツト及びミネラルターペンを含む。)
五十五 前各号に掲げる物のみから成る混合物
有機溶剤の業務とは
有機溶剤の業務とはどのような仕事でしょうか?
具体的な業務については有機溶剤中毒予防規則に掲げてあります。
有機溶剤中毒予防規則(第1条第1項第6号)
6.有機溶剤業務 次の各号に掲げる業務をいう。
イ 有機溶剤等を製造する工程における有機溶剤等のろ過、混合、撹拌(かくはん)、加熱又は容器若しくは設備への注入の業務
ロ 染料、医薬品、農薬、化学繊維、合成樹脂、有機顔料、油脂、香料、 味料、火薬、写真薬品、ゴム若しくは可塑剤又はこれらのものの中間体を製造する工程における有機溶剤等のろ過、混合、撹拌(かくはん)又は加熱の業務
ハ 有機溶剤含有物を用いて行う印刷の業務
ニ 有機溶剤含有物を用いて行う文字の書込み又は描画の業務
ホ 有機溶剤等を用いて行うつや出し、防水その他物の面の加工の業務
ヘ 接着のためにする有機溶剤等の塗布の業務
ト 接着のために有機溶剤等を塗布された物の接着の業務
チ 有機溶剤等を用いて行う洗浄(ヲに掲げる業務に該当する洗浄の業務を除く。)又は払しよくの業務
リ 有機溶剤含有物を用いて行う塗装の業務(ヲに掲げる業務に該当する塗装の業務を除く。)
ヌ 有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務
ル 有機溶剤等を用いて行う試験又は研究の業務
ヲ 有機溶剤等を入れたことのあるタンク(有機溶剤の蒸気の発散するおそれがないものを除く。以下同じ。)の内部における業務
関連資格のご案内
作業を指揮する方の資格について【有機溶剤作業主任者技能講習】
特に危険性や有害性の高い作業については高度な知識と豊富な経験を持つ「管理者」が作業現場に常駐し、作業者を指揮する必要があります。その管理者を「作業主任者」といいます。事業者は有機溶剤の業務に労働者を就かせるときは「有機溶剤作業主任者技能講習修了者」の中から作業主任者を選任する必要があります。