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「国の新たな熱中症対策」かんたん解説

国の新たな熱中症対策についてご説明します。

今回改正(追加)された労働安全衛生規則の内容を見てみましょう。

労働安全衛生規則 第六百十二条の二(新設)
(熱中症を生ずるおそれのある作業)

  1. 事業者は、暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、当該作業に従事する者が熱中症の自覚症状を有する場合又は当該作業に従事する者に熱中症が生じた疑いがあることを当該作業に従事する他の者が発見した場合にその旨の報告をさせる体制を整備し、当該作業に従事する者に対し、当該体制を周知させなければならない。
  2. 事業者は、暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、作業場ごとに、当該作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じて医師の診察又は処置を受けさせることその他熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置の内容及びその実施に関する手順を定め、当該作業に従事する者に対し、当該措置の内容及びその実施に関する手順を周知させなければならない。

まず今回の改正の背景をご説明します。

改正の背景 [その1]

熱中症による死傷(死亡)災害が2022年827名(30名)、2023年1106名(31名)、2024年1195名(30名)と3年連続で大幅に増加していること。


参照:令和6年 職場における熱中症による死傷災害の発生状
https://jsite.mhlw.go.jp/miyagi-roudoukyoku/content/contents/002172374.pdf


改正の背景 [その2]

熱中症の死亡災害に至る割合が他の災害の約5~6倍と特に大きいこと。


改正の背景 [その3]

死亡者の約7割が屋外作業であるため、気候変動の影響で今後増加の懸念があること。


改正の背景 [その4]

重篤化や死亡に至るケースのほとんどが「初期症状の放置・対応の遅れ」に起因していること。

国の求める熱中症の防止対策についてご説明します。

防止対策 [その1]

熱中症のおそれがある労働者を早期に見つけるために体制整備をすること。


熱中症のおそれがある労働者を早期に発見できるよう、熱中症の自覚症状がある労働者熱中症のおそれがある労働者を見つけた者が、その旨を報告するための事業所内の体制(連絡先や担当者)をあらかじめ整備しておかなければなりません。

補足解説

報告を受けるだけでなく、積極的に「熱中症の症状がある労働者を見つけるための措置」として、職場巡視バディ制の採用ウェアラブルデバイス等の活用や双方向での定期連絡等が推奨されます。

用語解説

バディ制とは?

バディ制度とは、新入社員1名ごとに先輩社員1名がつき、新入社員が職場や業務に慣れるまでの間、マンツーマンでさまざまな面倒を見る制度のことです。一般的にバディ(buddy)には、「相棒」「二人組」という意味があります。


ウェアラブルデバイスとは?

ウェアラブルデバイスとは、手首や腕、顔、耳などの身体の一部に装着して使用することができる電子機器のことを指します。これらのデバイスは「ウェアラブル」と呼ばれる通り、着用することができ、日常生活の中でデータを収集したり、様々な機能を利用することが可能です。


防止対策 [その2]

熱中症発生の状況に応じ、迅速かつ適切に対処し、熱中症の重篤化を防止するための措置の実施手順を作成すること。


具体的な手順の作成については、
  1. 事業場における緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先及び所在地等の作成
  2. 暑熱作業からの早期離脱、早期の身体冷却、有効な休憩設備の利用、ちゅうちょ無い医療機関への搬送の手順の作成、等があります。

防止対策 [その3]

関係労働者へ周知すること。


上記「体制の整備」や「手順の作成」については単に文書を作成するだけでなく、「関係労働者にしっかりと説明し周知」することが大切です。

※義務化の対象となる作業は、 「WBGT(湿球黒球温度)28度又は気温31度以上の作業場において行われる作業で、継続して1時間以上又は1日当たり4時間を超えて行われることが見込まれるもの」とされています。

なお以上の3つの防止対策「体制の整備」「手順の作成」「関係労働者への周知」については、事業者に罰則付きで義務付けられることとなりました。

※事業者が対策を怠った場合、6月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。



熱中症予防教育及び熱中症予防管理者

異常が認められる者が発生した場合の対応に関する教育については特に重要とされています。
作業者に対する教育は、「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」で示している「熱中症予防管理者」など、熱中症予防対策に詳しい管理者を各現場において選任し、その者が中心となって諸措置を実施することが望ましいとされています。

熱中症予防管理者等の業務は以下のとおりです。

  1. 作業に応じて、適用すべきWBGT基準値を決定し、併せて衣類に関し暑さ指数WBGT)に加えるべき着衣補正値の有無を確認する。
  2. 暑さ指数(WBGT)の低減対策の実施状況を確認する。
  3. 入職日、作業や休暇の状況等に基づき、あらかじめ各労働者の暑熱順化の状況を確認する。なお、あらかじめ暑熱順化不足の疑われる労働者はプログラムに沿って暑熱順化を行う必要がある。
  4. 朝礼時等作業開始前において労働者の体調及び暑熱順化の状況を確認する。
  5. 作業場所の暑さ指数(WBGT)の把握と結果の評価を行う。評価結果に基づき、必要に応じて作業時間の短縮等の措置を講ずる。
  6. 熱中症のおそれのある労働者を発見した際に連絡を行う担当者や連絡先、措置の手順等について、作業開始前に周知する。
  7. 職場巡視を行い、労働者の水分及び塩分の摂取状況を確認する。
  8. 退勤後に体調が悪化しうることについて注意喚起する。

熱中症予防管理者になるには

熱中症予防指導員研修【熱中症予防管理者・作業者対象】の受講をお勧めします。

厚生労働省の熱中症予防関連のホームページが充実しています。

参照

STOP!熱中症 クールワークキャンペーン
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000116133.html


学ぼう!備えよう!職場の仲間を守ろう!職場における熱中症予防情報
https://neccyusho.mhlw.go.jp/


働く人の今すぐ使える熱中症ガイド
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000116133_00001.html